私たちが難なく感じている外界のリアリティーは、どこで、どのようにして生まれるのでしょうか?目や耳などの感覚器は、各感覚器に特化した物理情報を、外界から抽出し、その情報を、視床経由で、大脳に送り込んでいます。このような並列分散処理は、脳の初期知覚系の大きな特徴とされていますが、私たちの知覚像は、切り裂かれていません。これまで、異なる感覚情報を束ねるのは、連合野をはじめとする大脳皮質の役割と考えられてきました。しかし、個々のニューロン活動のふるまいを観察すると、すでに視床領域において、異種感覚間の相互作用が認められることが、分かってきました。さらに、視床ニューロンは、同じ感覚入力に対して、常に決まりきった応答をするわけではなく、生物が外界の中で置かれている状況に応じて、応答を変化させていることが、明らかになってきました。外界と大脳間をつなぐ視床に出現した、この計算機構が、生物にどのような意義をもたらすのか、議論していきます。