大脳基底核、小脳、前頭前野から一次運動野への体部位再現的入力様式―狂犬病ウイルスの逆行性越シナプス感染を用いた解析

 

京都大学 霊長類研究所 行動発現分野 宮地重弘

 

狂犬病ウイルスは、神経細胞特異的に感染し、シナプスを介して逆行性に感染が伝搬する。このウイルスを神経トレーサーとして用いることによって、脳内の特定の神経回路網の全体像を可視化することができる。我々は、この手法を用いて、運動制御に関わる神経回路の構成を解析してきた。運動の制御には、大脳皮質前頭連合野、大脳基底核、小脳などの脳領域が関与しているが、最終的な脳からの出力は、一次運動野からの皮質脊髄路を介して脊髄へと送られる。一次運動野にはいわゆる身体部位再現地図があり、一次運動野内の特定の領域は、特定の身体部位の運動を制御する。我々は、サル一次運動野のうち下肢、上肢近位部、上肢遠位部、および顔を表現する領域に狂犬病ウイルスを微量注入し、シナプスを介して逆行性にウイルスラベルされた細胞の分布を前頭前野、大脳基底核、小脳の各領域において解析した。その結果、各領域から一次運動野への多シナプス性入力が身体部位再現的に構成されていることが確認できた。また、同じウイルスを用いて前頭前野各領域への側頭および頭頂連合野からの多シナプス性入力様式を解析したので、合わせて報告し、これら多シナプス神経路の機能について議論する。

 

参考文献

Miyachi S, Lu X, Imanishi M, Sawada K, Nambu A, Takada M. (2006). Somatotopically arranged inputs from putamen and subthalamic nucleus to primary motor cortex. Neurosci Res. 56(3): 300-308

Miyachi S, Lu X, Inoue S, Iwasaki T, Koike S, Nambu A, Takada M. (2005) Organization of multisynaptic inputs from prefrontal cortex to primary motor cortex as revealed by retrograde transneuronal transport of rabies virus. J Neurosci. 25(10):2547-56.