「GABA性シナプス入力とGlutamate性シナプス入力の相互作用の非線形ダイナミクスとその数理モデル」

森田賢治・津元国親・合原一幸

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻

 これまで成熟脊椎動物の大脳皮質錐体細胞におけるGABAAチャネルの反転電位は、いわゆる静止電位とほぼ等しい程度の値であるとされてきたが、近年、陰イオン濃度の撹乱を抑えた測定法(Gramicidin-perforated patch-clamp)では、GABA-Aチャネルの反転電位は静止電位よりも10 mV程度高いことが報告された(Gulledge & Stuart 2003)。これが妥当かつ普遍的な事実だとするとき、その機能的意義はどこにあるであろうか。これまでGABA-A入力が単一神経細胞の入出力関係(興奮性入力と出力発火率の関係)に及ぼす効果とその機能的意義について多くの研究がなされてきたが、そのほとんどはGABA-Aチャネルの反転電位が静止電位とほぼ等しいという仮定に基づくもの(実験研究ではdynamic clamp法で反転電位を静止電位と同じ値に設定するという意味で)であった。本研究では、神経細胞のconductance-basedの数理モデル(Hodgkin-Huxleyタイプで変数が二次元のもの)を用いて、反転電位が静止電位よりも10mV程度高いGABA-A入力が単一神経細胞の入出力関係に与える影響を調べ、その機能的意義について仮説を提示する。