「新規に発見された皮質−基底核回路における調節機構」

古田貴寛

京都大学・医学研究科・高次脳形態学

 

アブストラクト:

一般にラット新線条体のニューロンの約95%は投射型ニューロンであり、黒質および淡蒼球内節に投射線維を送る群と淡蒼球外節に投射 線維を送る群のふたつの型にわけられると考えられているが、最近我々は新線条体にニューロキニンBを産生していることを特徴とするニューロンが第3の線 条体ニューロン群として存在していることを見い出した。このニューロキニンB産生ニューロン群は線条体で約5%の割合を占め、DARPP32を持たない など、独特の化学的性質を持つグループとして存在しており、従来知られていた2種の新線条体投射ニューロン系とは異なる第3の投射系として特異的に無名 質に投射線維を送ることを示した。

さらに今回、この新たに発見された線条体投射系の機能をさらに明らかにするために、ニューロキニンBの受容体であるNK3受容体を発現する無名質の ニューロンについて研究を行い、以下のような結果を得た。結果1)無名質に分布するNK3受容体発現ニューロンの9割以上が抑制性のニューロンであっ た。結果2)大脳皮質に投射するニューロンの一部はNK3受容体を発現していた。結果3)大脳皮質に投射するニューロンをwhole-cell clampによって記録しながらNK3受容体のアゴニストを適用したところ、膜抵抗の低下を伴う脱分極あるいは内向き電流の増加を示すニューロンがあっ た。

以上の結果をまとめると、線条体核の特別な神経細胞群がニューロキニンBを大脳基底部に放出し、それによって促進的な影響を受けた大脳皮質に投射する NK3受容体発現ニューロンが抑制性に大脳皮質の神経細胞の活動を調節している、という神経回路の存在が明らかにされたといえる。