大脳皮質から視床下核への投射について

東京都神経科学総合研究所 病態神経生理学研究部門
南部 篤


 DeLong らのグループによる提案 (TINS, 13: 266-271, 1990) 以来、大脳基底核の神経回路は、大脳皮質−線条体−淡蒼球内節/黒質網様部−視床からなる直接路 (direct pathway) と、大脳皮質−線条体−淡蒼球外節−視床下核−淡蒼球内節/黒質網様部−視床からなる間接路 (indirect pathway) に分けて考えられるようになった。これらの経路は、一部、下降路もあるが、専ら視床を介して再び大脳皮質に戻るとされ、最終的にはループを形成していると考えられている。direct pathway に関しては、眼球運動に伴う黒質網様部の活動に関する研究などから、脱抑制により視床-皮質を興奮させ、運動を制御していると想像されている。

 その他に、彼らの図にも描かれているように、大脳皮質-視床下核を介する経路もあるが、傍流であると考えられ、あまり注目されてこなかった。しかし、我々は、この経路が以下のような理由で重要であると考え、"hyperdirect pathway" として強調したい (J Neurosci, 16: 2671-2683, 1996)。

1、Hyperdirect pathway の所要時間は、線条体を介する direct pathway や indirect pathway に比べて短い。

2、実際、大脳皮質刺激で、早い興奮とそれに引き続く遅い抑制が淡蒼球で観察されるが、早い興奮は hyperdirect pathway を経由したもの、それに続く抑制は direct pathway を介したものと考えられる。

3、大脳皮質刺激で視床下核や淡蒼球で観察される早い興奮は、かなり強力なものである。

4、淡蒼球から運動関連ニューロンを記録してみると、運動に伴って抑制より興奮を示すものが多い。これは、direct pathway より、hyperdirect pathway を経由した皮質の影響を、見ているためかもしれない。

5、補足運動野、一次運動野から視床下核への投射について検討を行ったところ、視床下核の、主に一次運動野から投射を受ける外側部と、補足運動野から投射を受ける内側部に、それぞれ体部位局在が再現されていた。この体部位局在は、視床下核の障害によって引き起こされるヘミバリスムスの病態を、良く説明する可能性がある。


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