サル前頭葉皮質から線条体、および視床下核を経て黒質網様部に至る投射のトポグラフィーとその意義

滋賀医科大学 第一生理  陣内皓之祐


  サル大脳皮質の運動関連領野(運動野、運動前野、補足運動野)、前頭前野主溝腹側部(PSv)、および、前頭前野の他の領域(主溝背側部 PSd、背側部 PFd、内側部 PFm、眼窩部 OF; PFmdo と略す)などに慢性刺激電極を埋め込み、皮質刺激に対する黒質網様部(SNr)ニューロンの応答を記録することにより、皮質−線条体−黒質、あるいは、皮質−視床下核−黒質投射のトポグラフィーを調べた。視床刺激に対する応答、課題遂行時のニューロン活動も同時に観察した。

結果:
  線条体経由と思われる抑制性入力は、運動関連領野(主に運動野外側部、腹側運動前野外側部 VPMl)からは SNr の尾外側部に、PFmdo からは吻内側にと分かれて分布した。PSv からのものは中央から外側部にかけて分布し、前二者との重畳(吻側では PSv + OF、尾側では PSv + VPMl など)もみられた。
  視床下核経由とみられる興奮性入力も、ほぼ同様のトポグラフィーを示したが、PSv からの興奮性入力を受けるニューロンが極めて多いのに対し、 PFmdo から同入力を受けるものはごく少数であり、吻内側部への興奮性入力は主に PSv に由来した。
  PSv から抑制性入力をうけるニューロンでは、遅延条件つき GO/NO-GO 課題遂行時に視覚刺激に応答するものが多く、中には GO を意味する光刺激に選択的な応答を示すものも見られた。

考察:
  前頭葉皮質−線条体−黒質投射のおおまかなトポグラフィーは、 Ilinsky 等によって示唆されている黒質−視床−皮質投射のトポグラフィーにほぼ一致する。皮質の一領野から線条体を経て黒質に送られた出力が視床を通じて同じ皮質領野に帰還する可能性は高いと思われる。
  運動関連領野からの入力を受ける尾外側部は運動の制御に、PSv から入力を受ける中央-外側部は視覚と行動の関連性の認知に、また、PFmdo のうち眼窩部から抑制性入力を受ける吻内側部のニューロンは情動の制御に、というように SNr 各部は皮質との入出力関係に従って、それぞれ異なった機能に関与しているのではないかと思われる。
  線条体経由の皮質からの抑制性入力が、視床ニューロンの脱抑制により、同じ皮質に興奮的影響を与えるのに対して、視床下核経由の興奮性入力はこれを抑制すると思われる。PSv から SNr 中央-外側部に至る豊富な興奮性入力の存在は、PSv−視床下核−SNr の投射が、視覚−行動関連認知に重要であることを示唆する。SNr 吻内側部への興奮性入力が主に PSv に由来することから、PSv における視覚認知の活動が、眼窩部皮質における情動関連活動に抑制的影響を与えている可能性が考えられる。 


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