ラット膨大後皮質の線維連絡


ラット大脳皮質の大脳縦裂に面する領域の大部分は帯状皮質からなり,

その尾側部が後部帯状皮質posterior cingulate cortexである.後部

帯状皮質はラットでは膨大後皮質retrosplenial cortex (RS) すなわ

ちBrodmannの29野に相当し,Vogtらによれば,29a-d野の少なくとも

4つの領野に細分される.RSは,Papez回路の一部を構成することか

ら,情動の基盤となる領域の一つとして考えられていた.しかし,

近年,RSを損傷すると空間記憶課題の学習に障害が生じることや,

RSに水平面内での頭の向きをコードするhead direction cellsが存在

することが明らかにされ,RSが空間記憶や空間行動に重要な役割を果

たすことがわかってきた.このような機能の解剖学的基盤となるRSの

線維連絡は,おもにVan Groenら,Vogtら,および演者によって解明

されてきている.RSへの他の皮質からの求心性投射は,前帯状皮質,

一次運動野,二次運動野,海馬台複合体,頭頂連合野,視覚連合野

に,視床からは前核群と背外側核に主に由来する.RSからの遠心性

投射は,前帯状皮質,一次運動野,二次運動野,海馬台複合体,視

覚連合野といった皮質領域に終止する.皮質下では,視床前核群,

視床背外側核,線条体,上丘および中脳中心灰白質に達する.これ

らの投射のほとんどにはtopographyが存在する.以上の解剖学的解

析から,RSは,場所や空間に関する情報,体性感覚情報,視覚情報,

記憶に関する情報,運動情報のコピーといった入力を受け,運動に

必要な空間に関する情報を運動関連領野や前頭前野へ送るものと考

えられる.すなわちRSは空間記憶や空間行動といった空間に関連す

る高次機能に重要な役割を果たすと考えられる.