小田 哲子 先生

東邦大学・医学部・解剖学第二講座


演題: 

上行性コリン作動性システムの辺縁系視床核への投射様式の解析 -超微形態レベルでのシナプス構築を用いて-


要旨:

 空間作動記憶に関与していると考えられている内側辺縁系回路の中継核である視床前腹側核(AV核)は脳幹被蓋領域から上行性のコリン作動性入力を密に受けている。この入力は、乳頭体からAV核を中継して辺縁系皮質へ投射される情報伝達を修飾していると考えられている。本研究では、作動記憶の回路と上行賦活系の連関を形態学的側面により検討するために上行性コリン作動性システムのAV核への投射様式を以下のステップで解析した。 (1)順行性トレーサ法を用いて AV核への求心性線維、すなわち乳頭体、帯状回、前海馬台と視床網様核からの投射線維のAV細胞上でのシナプス形成部位の空間的分布を解析した。(2) コリンマーカーであるvesicular acetylcholine transporterに対する抗体を用いた免疫染色法でコリン作動性終末の分布を(1)と比較した。(3) ムスカリン受容体サブタイプm2,m3をサブタイプ特異抗体を用いてAV細胞内での分布を解析し、(2)で明らかにしたコリン終末の分布と比較した。その結果、コリン終末は樹状突起全体に広く分布していたが特に樹状突起遠位部に多くシナプスを形成していた。コリン入力部位は2つの主要な興奮性入力である乳頭体および皮質由来の終末の分布域と重複し、時にこれらの終末と非シナプス性の接触を形成していた。またムスカリン受容体サブタイプm3はコリン終末が主にシナプスを形成する樹状突起の遠位領域に分布しており、一方m2受容体はm3に比べ樹状突起のより近位領域に分布していた。以上の結果は、上行性コリン入力はAV核においてm3受容体を介して、皮質視床路、乳頭体視床路の両方の興奮性入力を修飾していることを示唆している。一方、AV核の隣の視床前背側核(AD核)はコリン入力を欠く核であるが、このAD核ではm2とm3の樹状突起内分布には有意差は認められなかった。


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