44回 神経解剖懇話会(2012326日)

「遺伝子改変狂犬病ウイルスを用いた制限型逆行性越シナプストレース法とその応用」

 

生理学研究所・神経分化研究部門

森 琢磨

要旨

脳の情報処理は、シナプス結合する複雑な神経回路によって達成されている。この複雑な神経回路は、ある単一のニューロンとそれにシナプス入力するシナプス前細胞から構成される微小神経回路、単シナプス性神経回路の集合として考えられる。シナプス結合する神経回路を解析するツールの1つとして、狂犬病ウイルスがある。 我々は狂犬病ウイルス(SAD株)の遺伝子を操作することで、1つだけしかシナプスを越えない狂犬病ウイルスベクターを作成した。 そして、狂犬病ウイルスを選択的に導入された単一ニューロンに、プラスミドを用いて外来的に糖タンパク質を発現させることで、欠損した越シナプス能をそのニューロンで回復させることで、 単シナプス性神経回路を選択的に可視化した。狂犬病ウイルスベクターをもちいた解析法をさらに発展させるために、GFPで可視化するだけでなく、神経活動をモニターするG-CaMP3、神経活動を光操作できるチャネルロドプシン2、そして遺伝子発現を人為的に操作できるrtTAなどを発現させる遺伝子改変狂犬病ウイルスを開発した。

また、より使用しやすいウイルストレーサーとして、狂犬病ヒトワクチン株、HEP-Flury株に基づく糖タンパク質欠損狂犬病ウイルスを開発した。これら異なる実験株に由来する糖タンパク質欠損狂犬病ウイルスの作成を通して、糖タンパク質欠損狂犬病ウイルスの作成効率には、転写活性、リボザイム活性そして欠損遺伝子の補完が重要であることが明らかになった。

 

略歴

平成16    京都大学大学院理学研究科生物科学専攻(林 基治教授)

平成16    京都大学霊長類研究所 COE博士研究員

平成1621年  ソーク研究所 博士研究員(Edward Callaway 教授)

平成21年より  生理学研究所 神経分化研究部門 助教(吉村 由美子教授)