ウイルスを用いた多シナプス性神経連絡の解析


1京都大学 霊長類研究所 行動発現分野

○宮地 重弘1


脳内の神経細胞は、シナプスを介して相互に連絡し、複雑な回路を構成している。脳の領域間の神経連絡を明らかにするために、これまでにさまざまな逆行性および順行性神経トレーサーが開発され、用いられてきた。しかし、これらの神経トレーサーは、シナプスを超えて伝搬されることはないため、複数のシナプスを介する多シナプス性神経連絡を解析することはきわめて困難であった。この問題を克服するための強力なツールとして、2種類の神経親和性ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)と狂犬病ウイルス(RV)が用いられるようになった。これらのウイルスは、神経細胞特異的に感染し、神経終末から細胞内に侵入すると、細胞内で増殖後、シナプス間隙を超えてシナプス前細胞に感染する。(HSVの一部の株は順行性に感染が進行する。) 感染した細胞は、抗ウイルス抗体による免疫染色で検出することが出来る。単一のウイルス株であれば、シナプスを超えた感染の速度はほぼ一定であるため、脳内へのウイルス注入後の生存日数を変えることにより、感染の及ぶ範囲を特定できる。我々は、RVCVS-11株を用い、サル前頭前野、頭頂連合野、大脳基底核、および小脳から一次運動野への多シナプス性神経入力様式を解析し、運動野の身体部位再現地図に対応して特異的な多シナプス性神経入力があることを明らかにした。その結果を示し、機能的意義について考察する。