中脳黒質ドーパミン細胞の投射様式


1滋賀医科大学 医学部 解剖学講座

○松田 和郎1


 中脳から投射するnigrostriatal pathway (A9)およびmeso-coritico-limbic pathway (A10)は運動・報酬・情動などに関与する重要な系であることは周知の通りであるが、それらの回路網の詳細は現在に至るも不明な点が多い。この原因の一つとして、従来のトレーサー実験ではいわゆるbulk injectionによって多数の神経細胞が一度に標識されるため、順行性/逆行性標識を問わず、対象とする系の大まかな投射様式の解析に留まっていたという点が上げられる。 このような問題点を克服するため、本研究では膜移行蛋白(GAP-43)Green Fluorescence proteinをコードする遺伝子組み換えSindbis virus vectorをトレーサーとして用い、単一の神経細胞を可視化する手法を用いた。本手法の利点は、単一細胞の軸索や樹状突起を標識して再構成し、標識細胞自身と出力先の神経核(あるいは皮質)の化学的特性を組み合わせて調べることによって、その投射様式の回路的意義を失うことなく単一細胞の解像度で解析できること、かつ軸索の長さなどを定量的に評価できる点にあると考えられる。 本口演では、モノアミン広域投射系の一つであるラット中脳のドーパミン神経系を対象として演者らがこれまでに行ってきた研究を、パーキンソン病などの臨床的側面・強化学習モデルとの関連の考察を含めて紹介する。