後部帯状回にみられる特異的コラム状構造

——辺縁皮質から大脳皮質を学ぶ--

理化学研究所・脳科学総合研究センター・脳皮質機能構造研究チーム

一戸紀孝


層構造という表面に平行な構造とコラム状構造という垂直な構造は大脳皮質において特徴的な構造である。このうちコラム状構造は大脳皮質の機能単位として多くの脳科学者の興味をひいてきた。ひとつの解剖学的コラム構造として、各層の錐体細胞の尖頭樹状突起が皮質表面に向かう際に20-100μm間隔のクラスターを形成することが知られており、そのモジュール(構成単位)様構造、およびサイズの一致から大脳皮質のひとつの機能単位(minicolumn)であるという仮説も提出されてきた(例えば、Ecclesのdendron)。しかし、このモジュール様構造は、機能もさることながら、その局所回路における位置づけ、さらに形成および維持のメカニズムに関してほとんど知られてこなかった。ラットの後部帯状回皮質にgranular retrosplenial cortex (GRS)という、前部帯状回・視覚連合野等の大脳皮質、空間認知に関わる海馬、視床などから入力を受け、空間記憶・学習に関与していると考えられる領域がある。このラットのGRSは第1層に尖頭樹状突起のクラスターを基調にした、はっきりしたモジュール様構造を持ち、このタイプのカラム状構造のひとつのモデルとして研究しやすい。我々はこの構造の構成要素、発達様式、mutant動物における発現様式、関連分子について調べてきた。本懇話会では、その研究の一端を紹介しつつ、後部帯状皮質にとどまらず大脳皮質全体に関して考えてみたい。

[参考文献]

Ichinohe N, Yoshihara Y, Hashikawa T, Rockland KS (2003) Developmental study of dendritic bundles in layer 1 of the rat granular retrosplenial cortex, with special reference to a cell adhesion molecule, OCAM. Eur J Neurosci 18: 1764-1774.

Rockland KS, Ichinohe N. (2004) Some thoughts on cortical minicolumns. Exp Brain Res. 158: 265-277.

Miró-Bernie N, Ichinohe N, Perez-Clausell J, Rockland KS. (2006) Zinc-rich transient vertical modules in the rat retrosplenial cortex during postnatal development. Neuroscience (in press)