前海馬台における皮質間線維連絡の形態学的解析

 

本多祥子、海津敬倫、石塚典生

 

要旨:  海馬周辺皮質の構成要素である前海馬台Presubiculumは、海馬台遠位側に隣接し海馬長軸に沿って背腹に細長く広がる皮質領域である。近年、ラット前海馬台においては空間認識やナビゲーションとの関連性が報告され始めている。演者はこれまで標識物質注入法を用いラット前海馬台の皮質間線維連絡を形態学的に解析してきた。海馬体(海馬台、アンモン角、歯状回の総称)で処理された記憶情報は複数の帰還経路(皮質性投射経路および視床前核群を介する皮質下投射経路)により嗅内野へ戻るが、中でも皮質性投射系路は「CA1、海馬台→嗅内野深層」の直接投射路と、「海馬台→前海馬台を含む海馬周辺皮質領域→嗅内野浅層」の間接投射路とに大別できる。前海馬台は、海馬体情報の出力部位である海馬台から多量の入力を受けると同時に嗅内野と強力な線維連絡を有しており、上記の間接投射路において要の役割を担う領域と言える。しかし神経線維連絡に関するかつての報告では前海馬台の腹側もしくは背側が部分的に観察対象となっており、前海馬台神経結合の全体像については未だ不明な点が多い。演者は海馬長軸に直交する断面で完全連続切片を作成することにより、常に前海馬台全域を観察し、層、部位ごとの神経結合解析を行っている。これまでの解析の結果、@前海馬台から嗅内野への投射 A前海馬台内部を連合性、交連性に繋ぐ内部結合 における特徴的な結合様式(部位対応投射、層特異的終止)の存在が明らかになった。本懇話会ではこれらの結果を提示すると共に、海馬体から嗅内野への皮質性投射系路の全体像について考察を述べたい。

参考文献:

Honda Y, Umitsu Y, Ishizuka N (2008) Organization of connectivity of the rat presubiculum: II. Associational and commissural connections. J Comp Neurol 506:640-658.

Honda Y, Ishizuka N (2004) Organization of connectivity of the rat presubiculum: I. Efferent projections to the medial entorhinal cortex. J Comp Neurol 473:463-484. [erratum : J Comp Neurol. 2004 Aug 30;476(4):440-2]

本多祥子、石塚典生(2001)神経研究の進歩45(2) 海馬台から嗅内野への出力路

 

略歴:

氏名 本多 祥子(ほんだ よしこ)

1992年(平成4年)東京女子医科大学医学部卒業

1996年(平成8年)東京女子医科大学医学部大学院生理学専攻博士課程修了

1996—1999        (平成11年)

東京女子医科大学医学部第2生理学教室 助手

東京都神経科学総合研究所 神経細胞生物学研究部門 研究生

1999—2006年(平成18年)

東京女子医科大学医学部解剖学教室 助手

2006現在

同 准講師

東京都神経科学総合研究所 高次脳機能研究分野脳構造部門 客員研究員

神経解剖学分野において、ラット海馬周辺皮質領域の神経結合関係の形態学的解析を行っている。