消化管に分布する迷走神経の投射様式の現状と展望

兵庫医科大学解剖学講座細胞生物部門

早川 徹

 

軸索流法と免疫組織化学の手法を用いて迷走神経の消化管に対する運動神経と感覚神経の投射様式を検索した。運動神経は食道から胃の噴門にかけては疑核compact formationAmC)と迷走神経背側運動核(DMV)が投射し、噴門より尾側の胃と腸にはDMVが主に投射していた。DMVAmCはアセチルコリン作動性であり、AmCCGRPも含んでいた。AmCは食道の横紋筋には運動終板に、胃の平滑筋には自由終末を形成して投射し、DMVは食道と胃の筋層間神経節細胞に直接投射してシナプス結合している事が電子顕微鏡の観察で明らかになった。従って上部消化管ではAmC が消化管の筋細胞を直接活性化させ、DMVが筋層間神経節細胞を介して消化管運動を制御していると考えられる。また、DMVニューロンは胃と小腸及び大腸には側枝を出して投射するが、十二指腸には別個のニューロンが投射していた。感覚細胞は吻側のJugular ganglion (JG)と尾側の Nodose ganglion (ND)に認められ、食道にはJG NDの両方が分布し、横隔膜以下の消化管には主にNDのみが分布している。JGNDを特徴づけるためにCGRPBDNF及びCalretininの免疫組織化学を施した。CGRPは主にJGで認められ、BDNFCalretininJGNDに多く認められた。逆行性トレーサーと免疫組織化学による二重標識を施すとJG の食道投射ニューロンの半数以上がCGRP陽性であり、腹部消化管投射ニューロンにはCGRP陽性細胞は殆ど認められなかった。一方、食道投射ニューロンも腹部消化管投射ニューロンも90%以上がBDNF陽性であった。Calretinin陽性ニューロンも食道にも腹部消化管にも投射していた。今後さらに消化管に投射するJDNDニューロンの神経化学物質による特徴を明らかにしていきたい。