タイトル

「体重調節から見たオレキシン神経による行動制御ネットワーク」


東邦大学医学部解剖学講座微細形態学分野・講師  船戸弘正


要旨

視床下部は、摂食行動、体重制御、体温調節、ストレス反応、睡眠・覚醒、情動行動など様々な機能・行動の中枢としての役割を担っている。オレキシンは視床下部外側野に限局した発現を示し、摂食行動を促進する神経ペプチドとして同定された。その後、オレキシンが摂食促進作用とは独立して、体重制御に関与する可能性が示されていたがその詳細は不明であった。

演者はオレキシンによる体重制御機構を明らかにするために、オレキシンに関連する遺伝子を改変した動物を用いて、高脂肪食飼育下での体重変化を調べた。その結果、オレキシン過剰発現マウスは高脂肪食誘導性肥満に抵抗性を示し、この肥満抵抗性にはオレキシン2型受容体が必須であることが明らかになった。解剖学的には、オレキシン2型受容体は視床下部弓状核に豊富に存在しており、オレキシン神経は弓状核を含む視床下部腹内側部に多数の線維を投射している。オレキシンの視床下部腹内側部への影響を検討するために、オレキシン過剰発現マウスやオレキシン2型受容体アゴニスト投与マウスの視床下部腹内側部での遺伝子発現を検討したところ、NPYAGRPという摂食行動を促進する分子の発現が低下し、c-FOS陽性細胞が減少していた。

また、オレキシン神経は交感神経系やドーパミン神経にも投射している。体重の制御には、交感神経系を介した体温調節によるエネルギー消費の増減や、ドーパミン神経系による報酬行動の変化も関与していることから、これらについての検討も合わせて行った。



略歴

平成63 東京医科歯科大学医学部医学科卒業

平成64月  東京医科歯科大学大学院医学系研究科入学

平成74月  東京大学大学院医学系研究科神経病理(井原康夫教授)に国内留学

平成103月  東京医科歯科大学博士課程修了 博士(医学)学位取得。

平成104 日本学術振興会特別研究員

平成 135月  東京大学医学部附属病院精神神経科医員

平成147月  都立墨東病院神経科医員

平成157月  山口大学医学部精神科助手

平成176月  テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター(柳沢正史教授)博士研究員

平成206月  山口大学医学部精神科助教に復職

平成214月より東邦大学医学部解剖学教室微細形態分野・講師。