[金子 to 田中:2月23日]
ところで、こちらの姜先生と相談したのですが、シンポジウムに少し工夫をしてみたいと考えております。当初の計画とは異りますが、先生に一番初めに話していただいて、その一部分で問題提起の様なことを指摘していただく。特に皮質カラム内神経回路あるいはカラム間神経回路において実験科学者に求められている部分を指摘していただく。それに対して後の演者の4人が自分のデータを基に提起された問題に答えていく。などといった形式にしたら面白くなるのではないかと考えました。
もちろん、先生には皮質カラム内神経回路あるいはカラム間神経回路の理論的研究と言うことでご自分のテーマを話してもらいますが、その一部で実験を行なっている演者に理論的な観点から必要な情報を要求していただき、シンポジウムを有機的なものにしたいのです。いかがでしょうか?
[田中 to 金子:2月26日]
大変に面白い企画だと思います。そのような形でシンポジウムを進めるには、私がとるべき次のアクションとしてどうしたらよいでしょうか?私が理論屋の立場で一方的に勝手な問題提起をしてしまっては、後でお話しする講演者が話にくくなることも考えられます。そこで私からの提案としましては、取りあえず、私以外の講演者の方々の主な発見やそれに基づく示唆や主張を聞かせて戴いて、それを踏まえたうえで理論屋からの問題提起をリストアップし、もう一度4人の方にフィードバックして提起する問題の妥当性や整合性を検討して戴くというのは如何でしょうか?恐らく、実験の方々よりも理論の人間の方が講演内容にはある程度融通がきくと思います。
[金子 to 田中:2月26日]
仰るとおりです。まず、実験家の要旨を見ていただいて、それからフィードバックした上での問題提起にしていただけたら良いと思います。ただ、実際のシンポジウムの場面では先生に最初に問題提起をしていただくと、少しやらせっぽくはなりますが、シンポジウムにストーリー性が加わり面白くなるかなと考えたわけです。先生の仰るとおり提起される問題と他の講演との妥当性・整合性をはかりたいと思います。そう言った意味でも、シンポジウムのWWWホームページを討論の場にし、いろいろと内容を練りたいと考えております。

[金子 to 姜:3月8日]
文献有り難うございました。早速掲載しておきました。 姜さんが錐体細胞への抑制性入力の話をするならば、川口さんの直後がよいかと思います。そのあと、錐体細胞間の結合の話を私がして、興奮伝播の経路の話を谷口さんが引き継ぐとすれば中々すっきりして見えると考えます。いかがでしょうか?
[姜 to 金子:3月9日]
シンポジウムの話の順番は金子先生の案で大変良いと思います。 シンポジウムの要旨を一緒に送ります。まだ変更するかも知れませんがよろしくお願 いします。

[顔合せ・打合せ会:5月31日、名古屋、理研バイオミメティックコントロール研究センター]
参加者:金子、川口、姜、田中、谷藤(50 音順)

各シンポジストの発表を他のシンポジストが批判的に議論しながら、打合会が行なわれました。できるだけシンポジウムの妥当性・整合性をはかりストーリー性を盛り込むよう、さらなる検討が必要であると考えられました。

具体的なシンポジウムの進行についての取り決め:
1)司会は前半の3題を金子、後半の2題を川口が受け持つ。
2)一人の発表時間は質問を合わせて35分ずつ。実際の発表は余裕を考えて25〜30分/人を厳守する。
3)発表の方法はスライドを主にするが、谷藤氏のデータについては Video が可能かどうか学会本部と交渉する。
4)各自、打合会等で出てきたことがらを基に他のシンポジストに対する質問あるいはコメントを用意してくる。1〜2枚のスライドの呈示などを含め、予めシンポジウムに組込む。たとえば、谷藤さんの神経興奮の伝播を示す仕事を支持する所見として、6層の錐体細胞は2種類在り、それぞれ縦に上行する軸索側枝と6層を横方向に拡がる軸索側枝を特徴とすることを金子がコメントする。(他にも何か予めスライドを用意してコメントをしたいシンポジストは金子まで御連絡下さい。)
(文責 金子)



[田中 to 金子:6月3日]
当初の計画通り、私がトップバッターとして話をするという仮定のもとで話の大枠を下記のように再調整してみましたが、如何でしょうか?

従来のニューラルネットワークの研究では、主に(1)入力に対する出力の準線形応答、(2)ニューロンの性質の同一性、および(3)単純な興奮と抑制の回路に基づいたものであった。しかしながら、大脳皮質における情報処理論を展開するためには、こういった単純な回路構成ではもはや不十分なことがわかってきた。例えば、第一次視覚野におけるニュロンの応答特性だけをみても、[1]ゲインコントロールのメカニズム、[2]特徴抽出細胞における反応選択性の増強、[3]時空間受容野の形成、[4]複雑型細胞にみられる非線形応答特性、[5]意識レベルや注意による反応のモジュレーション、[6]皮質内でのニューロン活動の増幅作用、[7]高次統計量によってのみ区別される視覚パターンへの反応性、[8]主観的輪郭線に対する反応への関与、[9]視覚パターンの時間変調へのコーディング、等はいずれも従来型のニューラルネットワークでは説明できない現象である。このような観点から、情報処理単位としての単一コラム内の(1’)シナプス伝達における複雑性と非線形性、(2’)生理学的にみた皮質ニューロンの多様性、(3’)それらニューロン間のフィードフォワードおよびフィードバックシナプス結合のパターン、に関する研究の必要性が指摘できよう。
大脳皮質における情報処理についての理論研究の立場から、まず上記(1’)から(3’)の重要性を浮き彫りにし、次いである種の非線形性を仮定することによって、いくつかの問題に対する説明を試みる。最後に、時間情報コーディングの一般的枠組みとして「時分割コーディング」のアイデアを提唱する。

理論と実験の関係性は以下のように考えております。
(1’)シナプス伝達における複雑性と非線形性:姜先生のお話に関係。
(2’)生理学的にみた皮質ニューロンの多様性:川口先生のお話に関係。
(3’)それらニューロン間のフィードフォワードおよびフィードバックシナプス結合のパターンに関する研究:金子先生と姜先生と谷藤先生のお話に関係。

「掛け算素子」のアイデアについてはあまり受けがよくなかったので、講演では非線形性を論じるときの一例として位置づけることにしたいと思います。また、「遅延時間の生成」については、必ずしも皮質局所回路との接点が明確ではなかったので、聴覚系のmissing fundamentalへの適用等自己相関関数によるコーディングを例示する際にオプションとして軽く触れる程度におさめたいと思います。

旅館での議論で話題にした、Douglas and Martinの文献は以下の通りです。ちょっと目を通してみて下さい。彼らのアプローチには理論研究の面白みも知恵もあまり感じられないので、個人的にはあまり重要視していませんでしたが、実験の方々には受けがいいかもしれませんので、お望みとあれば講演のときに言及しても構いません。
1) Douglas and Martin, A functional microcircuit for cat visual cortex. (1991) J. Physiol. 440, 735-769.
2) Douglas et al. Recurrent excitation in neocortical circuits. (1995) Science 269, 981-985.
3) Suarez et al. Modeling direction selectivity of simple cells in striate visual cortex within the framework of the canonical microcircuit. (1995) 15, 6700-6719.
Neural Computationにも彼らのモデルの論文が掲載されていましたが、コピーを紛失してしまいお知らせすることができません。内容は2)や3)とほとんどかわりばえがしなかったと思います。

忌憚のないご意見をお待ちしております。


[金子 to 田中:6月6日]
ありがとうございます。早速WWWに掲示はしておきました。私自身は現在、先生の再調整案を考慮中です。Douglas and Martin の論文もチェックしてみようと思います。遅延回路、掛算回路についてですが、大脳皮質ニューロン・回路の現在の知見と折り合う可能性のある具体的な回路モデルが必要とされると感じております。

先生の案とは別の話としてですが、打合会で4人のデータを御覧になって、そこで呈示された局所回路と神経細胞の反応特性の結果から、可能な神経回路モデルとその機能についてのアイデアは有りませんでしょうか?情報が皮質4層に入力するとして、一般に2、3層でカラム間の水平方向の連絡を使用して、情報処理がなされる。これは一般に論じられているスキームですが、谷藤さんの結果の様にそれは6層に帰されて皮質内で縦方向にカラム内のループを形成している。しかもその時6層においても水平方向の拡がりが存在する。カラム内ループの形成によって情報の一時保持など特性はモデル化できないでしょうか?これは遅延時間の生成の話とも絡んでくると思います。大脳皮質の持つ機能としてカテゴライズという意味での情報処理については入力xが処理されて出力y = f(x)となって出て行くという考え方で良いとは思いますが、大脳皮質の機能はそれだけとは私は考えたくない。大脳皮質カラムの内部状態をwとすれば、もっと時定数の遅いダイナミクスがあって、線型近似すれば、(tau)dw/dt = -w + f(x), y = g(w) というようなものがあるのではないか?ここでtauは大きくて100msのオーダーを考えます。さらに、こうしたスキームに抑制性の制御がどう関わるのか考えますと、水平方向のGABAA系はカラム間の側方抑制に思えますし、GABAB系の縦方向の抑制(?)は上記の(tau)に効いてきてダイナミクスの特性に変化を与えるのではないか?

今のところ、上記のようにそれほど対した考えも浮かんではおらぬのですが、打ち合わせでうかがった皆さんの結果・アイデアから、なお考えを進めて、先生と議論してみたいと思います。先生には中々大変なことをお願いしておりまして心苦しく感じておりますが、何卒宜しくお願いします。



[金子 to 姜:6月16日]
シンポジウムについて姜さんにお願いです。演題の中で、ニューロンがひとつのインテグレーターとしてアクティブな性質を有しており、このことが局所回路の性質を決めるときに重要な要素となる可能性を指摘していただけないでしょうか?例えば、Sakman たちが言い出しているように樹状突起も単にパッシブな存在でなくニューロンの入出力特性に多大な影響を与えると考えられます。姜さんの話の後半部の Depalarizing afterpotential の前ぐらいに、現在一般に重要と考えられているニューロンの(活動電位以外の)アクティブな性質をまとめていただけませんでしょうか?このことは、今回の局所回路の議論においていままで置き去りにされていた部分ですので誰かにまとめていただきたい。その候補としては姜さんが一番近いと思います。いかがでしょうか?
[姜 to 金子:6月17日]
6月16日の件、了解しました。一両日中に考えをまとめて、相談に伺います。

[谷藤 and 金子 @ 神経細胞工学研究会(大阪)]
谷藤:シンポジウムを有機的なものにするために、最後に総合討論をしたほうがよいのでは?
金子:最初にいろいろ考えたが、シンポジスト全員が演台に上がっての総合討論で成功した例を余り見ない。要は活発な討論が生じれば成功と考えている。例えば、田中さんに最後に実験家4人のデータに対してそれぞれコメントを戴くなどというのはどうか。5人で180分の時間があるので講演25分+質問5分にすれば合計で30分余る。その半分の15分を講演延長の予備にとっておいても、残りの15分を最後にすべての講演に対する質問時間にできる。そこでの質問の口火に田中さんにコメントをもらうというのがいいかも知れない。
谷藤:もう一度シンポジウムの前に皆で最後の打ち合わせをした方がよい。
金子:賛成。9月12日の12:30に昼食を囲みながらではどうか?

[金子 to 田中:7月6日]
いよいよシンポジウムが近づいてきました。今日、谷藤さんと会って話したのですが、最後に田中さんにコメントを戴いて、シンポジウムのシメとすると共に、フロアーからの質問の口火を切っていただきたいと思いました。最初に田中さんの呈示された問題に対して、実験家は答えているのかどうか御批判を仰ぎたいと思います。如何でしょうか?

Douglas の論文を読みました。canonical microcircuit というものですが皮質の2・3層と5・6層との間に反響回路を考えると言うことでしょう。それで何がよいかというと、Signal Restoration or Amplification (S/N 比が上がる)、lagged input に対しても反応できるといったところでしょうか?田中さんが言われたようにどうも理論的には大したアイデアではない様に思えました。しかし、谷藤さんのデータ(カラムないの縦方向の反響回路と横方向の拡がり)の意味を理解するのに、ひっぱり出してみても面白いと考えました。できれば、田中さんの講演で批判的に紹介していただきたいと思います。個人的には、こうした情報の保持といった意味での反響回路は視床と大脳皮質の間にも成立し得るということを指摘したいところです。



[金子 to シンポジスト各位:7月6日]
以下の時間配分でシンポジウムを進行したいと考えます。
  7月12日、12:30。直前の打ち合わせ、A会場受け付けに集合。
  シンポジウム。14:00〜17:00。
  シンポジウムのテーマの説明とシンポジストの紹介(金子)。5分。
  各自講演の持ち時間25分+個別の質問時間5分。
  講演延長に対する予備時間15分。
  最後にシンポジスト全員に対する質問時間10〜25分。
  pm6:00からシンポジストの皆さんの慰労会。(幹事、金子)

その他、自分以外のシンポジストに対するコメントがある人はご用意下さい。(例えば、金子は谷藤さんの話に対して、6層の錐体細胞にはカラム内を上方に軸索側枝を出すものとカラムをまたいで横方向に側枝を出すものの2種類があることをスライドで示し、コメントします。)



[田中 to 金子:7月8、9日]
金子さんのご提案はよく理解できました。本日谷藤さんともお話致しましたが、明日もう一度打ち合わせをして、シンポジウムをより実りあるものにするべく検討したいと思います。明日またご連絡しようと思いますが、金子さんはいつ神戸に向かう予定ですか?私も谷藤さんも11日に出発する予定で、10日までは確実に理研におります。急ぎの連絡は電話にてお願い申し上げます。電話番号は048-465-1783(直通)。

何とか他のシンポジストの方と共通の接点がもてるように頑張っていますので取り敢えずはご安心下さい。

残念ながら今日は谷藤さんと打ち合わせをする時間が取れませんでした。

昨日の彼との話では、次の点について討論できればいいのではないか、ということになりました。(1)全体として何がわかったか。(2)生理学との関係。(3)計算論との関わり。(4)テクノロジーの限界。(5)今後の発展の方向。

全体討論に入った段階で質問が出にくいようでしたら、私が口火を切って一般的な質問をしても構いませんが、あまり私がでしゃばり過ぎるのはよくないので、金子さんに総括的なコメントで登壇者の話を簡単にまとめて戴くことによって口火を切る方が良いのではないかと思いますが如何でしょうか?


[谷藤 to 金子:7月9日]
昨日はお忙しいところ電話いたしまして申し訳ございません。電話での話を整理いたします。
1)総合討論は、各スピーカーの話を聞いただけで終りにしないために必要であろう。
2)しかし、一般に総合討論はだれるので、次のような項目を揚げて皆で議論するというのはどうか。
(もし、間に合うようなら、それに必要なスライドも用意すると良いかもしれない。)
     (1)全体を通して、大脳皮質の局所回路について何がわかってきたか。
     (2)個体レベルでの生理学的役割は何か
     (3)理論と実験の対応は?
     (4)研究手法の限界とこれからの方向
     (5)今後の展開の方向、可能性
総合討論なのでスペキュレーションでも構わないのではないか。各項目についてまず金子先生に整理していただいた上で聴衆を交えた議論を始められたら良いのではないか。
以上ですが、昨日の電話の様子では同じ様なことを考えておられるようなので、蛇足だったのではないかと思っています。
[金子 to 田中:7月9日]
>(1)全体として何がわかったか。(2)生理学との関係。(3)計算論との関わり。(4)テクノロジーの限界。(5)今後の発展の方向。
(少し、論点が広すぎて漠然とした印象がありますが.....)

わかりました。言い出しっぺですので、総括的討論の前に登壇者の話を私が簡単にまとめることにします。ついては、以下のようなスライドを用意しますので田中さんのお話をまとめる Key Words をお教え下さい。

シンポジウムのまとめ
1)田中 繁「コラム内局所回路の計算論:情報表現から情報処理へ」
  ????
2)川口泰雄・窪田芳之「大脳皮質GABA作働性細胞のサブタイプとシナプス結合」
  非錐体 GABA ニューロンの多様性。
3)姜 英男「大脳皮質各層の錐体細胞より見た抑制性局所回路及びその機能」
  GABA 作用の多様性。空間的分布。単に IPSP 生成だけではない。
4)金子武嗣「大脳皮質錐体ニューロンの局所連絡」
  錐体細胞間の軸索側枝による連絡の偏り。III->V。IV, V, V->VI。
5)谷藤 学「水平方向神経興奮伝播における層間局所回路の役割」
  皮質スライス内での興奮伝播。垂直方向と水平方向の伝播の存在。
このまとめの後、フロアーからの質問等が無い場合、まず、田中さんに話を振りますので、上記の(1)〜(5)の論点を念頭にコメント・質問をお願いします。


[田中 to 金子:7月9日]
1)田中 繁「コラム内局所回路の計算論:情報表現から情報処理へ」
従来型のニューラルネットワーク理論の限界。高次統計量の計算を可能にする脳内メ カニズム解明の重要性

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